作品DBトップ >

宇宙よりも遠い場所[アニメ]の評価: 2018/04/13 by アマンドの木


[友情] [考えさせられた] [感動] [涙流した] [面白い]
アニメ総合点931位6,103作品中総合点30 / 偏差値52.23
アニメ平均点835位2,794作品中平均点1.20=良い/25評価
2018年アニメ総合点3位210作品中

評価/評価統計/説明・概要:/属性投票/ブログ/商品(順:売上/新着/)(Bray/DVD)/画像/待受
並び順: 新着順 古い順 推薦数順
評価系統絞込:

この評価板内限定

[推薦数:2] 2018/04/13 最高(+3 pnt) [編集・削除/削除・改善提案/この評価を推薦/削除・改善提案/共感コメント送る]
by 評価履歴[良い:669(73%) 普通:229(25%) 悪い:24(3%)] / プロバイダ: 11608 ホスト:11541 ブラウザ: 9186
王道の青春グラフィティ、正しき「行きて帰りし物語」。四人の少女は南極を目指し、南極で過ごし、南極から帰ってくる、そこに最高の青春を描き出す作品。
だから最初に主人公は言う、青春したいと。青春とは何なのか、それはこの作品が描き出した彼女達の総体だ。

この作品の非凡なところは、青春に形を与えなかった点。南極は彼女らの青春の象徴であっても、青春そのものではない(高校球児の青春は甲子園という場所ではないように)。彼女らは南極を目指すが、それ自体は彼女らが過ごす青春ではないのだ。
第二話で主人公は、新宿を全力疾走しながら「青春している」と笑う。ここで重要なのは、新宿という場所でもそこを走る事でもない。「走っている」その状態こそが青春なのだ。青春とは、どこか遠くに存在しているのではなく、何かに向かって行動する事でもなく、今まさに何事かを成しているという状態、心も体も躍動するその瞬間を青春というのだ。

だからこの作品の青春には明確な形がない。青春は一定の形ではなく、躍動し続けるものなのだから。
彼女らは動く。めちゃくちゃでもいい加減でも、動く。それこそが青春であり、それが許されるのが高校生という時間なのだ。正解を探して足を止めている時間を惜しむように、彼女らの心と体は動き続ける。
最終回の手前まできて主人公は「北極でもよかった」と言う。彼女の求めた青春とは、目的地でもそこを目指す行動でもなく、ここまで動き続けた自分達そのものなのだから。

四人の少女は、それぞれがそれぞれの陰や欠落を抱えている。彼女らはこの旅で、その陰に光を当て欠落を埋めていくのだが、それぞれに異なるものを抱えているのだから、それぞれが異なるものを手に入れる。同じ場所を目指し、同じものを手に入れるのではない。同じ場所を目指し、別のものを手に入れるのだ。
最終回に流れる四人のモノローグは、ものの見事にバラバラな事を言っている。彼女らにはそれぞれの青春があり、それは決して共有するものではない。異なる人間には異なる青春がある、だからこそ異なる四人が共有した時間と空間は尊く、それを共有できた四人は親友となるのだ。

趣味も好みもバラバラで性格も噛み合っていない、友達に関する見解すら共通認識を持っていない。
そんな四人が、そんなバラバラな部分を時にむき出しにしてぶつかり、ぶつかっても互いに曲がらず、間違いも失敗もいとわずに動き続ける。正しい対処、善き方法論、隠れた真実、そんなものには目もくれず、自分達が納得できる答えだけを掲げて走り抜ける。
それが青春だと言わんばかりの姿が全面的に描かれる。

これは製作者の非常に優れた点で、大人である製作者による「あるべき答え」が提示されない。主人公達は大人からカンペをもらう事なく、自分達の言葉を語る。
だから南極に到着した時、主人公は「ざまぁみろ!」と言うのだ。友人を傷つけた者に「ふざけんなよ!」と啖呵を切るのだ。それはきっと、最善の言葉でも、最良の行動でもない(大人から見ればね)。でもそれは主人公達にとって、唯一の正解なのだ。例え正しくなくとも、その正解しかありえないのだ。

この作品では、そういう「間違い」を積極的に描く。
南極周辺の暴風圏で、主人公達は荒れ狂う海を見るためにデッキに出る。端的に危険な行為なのだが、それしかありえない行動として描かれる。
壮絶な船酔いで精神的に追い詰められている中、自分達がここにいる意味を再認識し、今の最悪な状況を積極的に肯定した以上、台風の夜に無意味に外に出て風雨に曝されたいテンションから逃れることなど出来ようか。ならば、危険であってもそうさせる。
間違わないようにするのではなく、間違いを肯定するのではなく、間違いであってもやらねばならぬ事があり、それをすることが許されるのが青春なのだ。大人になって正しい事しか出来なくなる前に、やらねばならぬ間違いもあるはずだ。

こんな溌溂とした青春、躍動する心と体を描く作品なので、当然そこから置き去りにされる者も出てくる。
主人公達は、その者を待って足を止める事はない。置き去りにされた者はどうすればいいのか。
ならばもう、北極に行くしかない。

最終回で主人公の友人が北極にいる写真を送ってくる。この友人は、まさに置き去りにされた者なのだが、彼女もまた青春している事が描かれたのだ。
これほど力強いラストがあるだろうか。
置き去りにされたのだ、自分で進むしかない。その一歩、その踏み出した瞬間にこそ青春が現れる。それはきっと、主人公の友人に限った話ではない。
この作品を見ている我々にも、同じことが訴えかけられているはずだ。青春しようと。

一話完結の形式で1クール13話、きっちりと行きて帰りしまで描き切ったこの作品の完成度は特筆すべきものだろう(今後のアニメ作品はえらくハードルが上がるぞ)。青春の明暗、人情の機微を描き、テンポの良いコメディを交えつつ、要所を締め見せ場をちゃんと盛り上げ、次の話につなぐ。第一話から最終話まで隙がなく、絵も音も話も構造も語る部分ばかりが募る稀有な作品。
キャラクターの声も気合が乗っていて、特に花澤香奈さんはその女優っぷりを全編にわたって見せつけている(でも個人的には、その花澤香奈さんのキャラにスポットの当たる回でわずかなセリフに自分の存在感を全力でねじ込んでくる早見沙織さんのが好き)。

一話一話、微に入り細を穿ち、一シーンごとに一台詞ごとに感想を述べていきたいくらいの作品。あえて難を言うならば、あまりにも完璧で続きとか考える余地もない事くらいだろうか。
10年代のアニメを代表する最高傑作と言っても過言ではないだろう。

キャッチーでウィットに富んだセンセーショナルな作品。こういう作品に巡り合えるのだから、アニメ趣味はやめられない。

[共感]
2018/10/14 「青春は一定の形ではなく、躍動し続けるものなのだから」とても響く表現ですね。青春への熱い想いを感じました。 by 無慈悲1020
2018/05/23 製作者のみならず観る者の「青春とは何だ」を炙り出すような作品だったと思います。力のこもったレビュー堪能しました。 by E・カリング
次を読む: 「友だちとは、友情とは...」 by スペ9


この評価を推薦 / 削除・改善提案 / 共感コメント送る
この作品の書込みを新着から表示する
作品の評価をする / 作品の属性投票をする / ファン掲示板に書き込む
評価/評価統計/説明・概要:/属性投票/ブログ/商品(順:売上/新着/)(Bray/DVD)/画像/待受

作品DB内検索

[作品DBトップに戻る]
友達招待:コピー/メール

作品DB(トップ/Myページ)|(c)1st Class(サービス:最速検索/皆声.jp/作品DB)